NHK「原発解体」について 

10月11日(日)夜に放映されたNHKスペシャル
「原発解体~世界の現場は警告する~」
http://www.nhk.or.jp/special/onair/091011.html
が話題になっていますが、これについて、高木基金の理事である
細川弘明さんからコメントを寄せいていただきましたので、ぜひ
お読み下さい。

なお、番組を見損なった方は、本日の夜(10月14日(水)午前0時45分~)
再放送がありますので、そちらもご覧下さい。

以下、細川理事からのコメントです。
なお、このコメントは、この番組を見て、「新たに放射化という現象を
知りました。」という感想を書かれた方への返信というかたちで書か
れたものですので、放射化の問題から始まっています。

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●「放射化」(activation)は放射能をあつかうときにきわめて厄介な問題の
ひとつです。
というのは、番組で紹介されていたような原子炉(おかま)本体の放射化もさ
ることながら、より厄介なのは、「遮蔽が効かない」ということです。

2つ例をあげると
(1)1999年東海臨界事故で、直後に現地調査にはいったグリーンピースがや
ったのは、周辺家庭をまわって5円玉と食卓塩を集めることでした。事故で中
性子線をあびることによって5円玉(亜鉛)と塩(ナトリウム)が放射化しま
す。放射性亜鉛と放射性ナトリウムの放射線量をそれぞれ測定することで、ど
れくらいの量の放射化がおこったかが推測でき、その原因となった中性子線放
射の量も計算できる(したがって、その家にいた人間の被曝線量も計算でき
る)からです。こういった現物の調査をしておかなければ、線源の強さと距離
だけの計算ですまされてしまったことでしょう。

(2)原発から放射能が外にもれる経路は大別して5つあります(事故以
外)。そのひとつが放射化水(activated water)です。燃料棒や配管などに
ピンホールがなければ、冷却水(浜岡や柏崎刈羽のような沸騰水型炉の場合は
2次冷却水)に放射能はふくまれない筈ですが、実際にはピンホールがなくて
も冷却水は放射化してそれが海に日々排出されています。冷却水のなかの水素
や不純物である金属が熱交換機を通るとき(沸騰水型炉の場合は復水器を通る
とき)に中性子線をあびて放射化してしまうからです(トリチウム、鉄、ニッ
ケル、ナトリウム、コバルト、クロムなどでしょうか)。

原発周辺の海底で貝や海草などから検出される放射能の多くは、これら放射化
物質(activation products)であると考えられます。(もちろん、小さな事
故で放出された炉内の放射能が蓄積されている分もある。両者の比率は個別の
核施設によって異なる。)

厳密に言うと、原発労働者の体内でも放射化はおこります(血液中のナトリウ
ムやカリウムの放射化)が、これは量や半減期からみて、ほかの2つの問題
(1 外部被爆、2 放射性の塵の吸引による内部被爆)ほど深刻に考えなくても
よいのかも知れません。

なお、放射能が漏れる他の4つの経路は:
・ピンホール( → 冷却水 → 復水器経路で海へ)
・排気筒から排出される気体放射能(ヨウ素、キセノン、ほか)
・所内で使用されたさまざまな機材や容器(ハンマーなんかも放射化してしま
います;あと番組でさんざん映っていた防塵用シートなど;排気筒のフィルタ
なども)
・除染水の放流(当初はぜんぶ溜める計画だったのでしょうが、見込みが甘
く、もう溜める場所がないので、フィルターを通したり水で薄めたりして「基
準値」をクリアしてから流しているようです。)

もちろん、これらとは別に使用済み核燃料があります。

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番組は小生も見ました。よく取材されていたと思います。現場の実情をつぶさ
に見ることで問題の深刻さがよく分かります。

ただ、ひとつ、非常に大きな問題というか不満がありました。というのは、
「原発解体」というタイトルにも反映されているように、廃炉になった原子炉
は「解体しなければならない」という前提を疑っていないからです。

細川思うに、廃炉後の正解は「解体しないこと」です。解体撤去とは別の選択
肢として「密閉管理」つまり、閉鎖してそのままおいておく(もちろん、人や
動物などが入らないように長期間密閉する) ── 要は旧核実験場と同じ扱い
をするのです。この選択肢はだいぶ以前から核廃棄物管理の専門家のあいだで
は検討されているもの(厳密には、「密閉管理」と「遮蔽管理」という2通り
のシナリオがある)ですが、日本政府は採用しませんでした。その理由は、廃
炉のあとに新しい原子炉を建てるという前提に立っているからです。

つまり「解体」という悩ましい問題は、原発に依存しつづけるという前提にた
てば避けられない課題ですが、脱原発の前提にたてば、密閉管理という別の対
処法がありうるのです(土地は死んでしまいますが)。わざわざ困難至極な解
体作業をおこなって、多くの労働者を被曝させ、大量の汚染物を敷地外に運び
出すのは割が合いません。

以上、とりいそぎ。
「手短に」というわりには長くなってしまいました。
間違いなどお気づきでしたら、どうぞご指摘ください。


細川弘明

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