島耕作ともんじゅ 


先週木曜日(5/24)に発売された「モーニング」の「専務 島耕作」が話題(問題?)
になっています。

島耕作が専務を務める初芝電産が発電事業に進出することになり、敦賀のもんじゅ
を視察し、その後、「原子力研究機構」の敦賀本部長とともに、小料理屋で一杯や
りながら、女将にエネルギー問題のうんちくをたれるというストーリーです。

島耕作という漫画としては、この後、大手電機メーカー「五洋電機」のやり手の若
社長・勝浦が同じ料理屋に現れ、実は、その料理屋の女将と勝浦には、一方ならぬ
過去があった、という設定で、初芝電産と五洋電機の発電事業に関わるビジネスの
争いと小料理屋の女将をめぐる島耕作と勝浦との男女関係で、話が進んでいくので
しょう。(菅波の勝手な想像ですが、よくこんな展開がありますよね。)

しかし、そこで島耕作と原子力研究機構の敦賀本部長との間で交わされる、高速増
殖炉(礼賛)問答は、ちょっとひどい。
まるで、もんじゅ推進側の宣伝パンフレットのようです。

高木基金には、昨年度の助成で、「ストップ・ザ・もんじゅ」のみなさんが発行し
た「高速増殖炉からの撤退-米・英・独・仏の政治判断-」というレポートが届い
ています。これはまさに、もんじゅ推進側の宣伝への対抗研究としてまとめられた
ものですので、この機会にぜひ多くのみなさんに読んで頂きたいと思い、紹介する
ものです。



その前に、まずは、島耕作と原子力研究機構敦賀本部長の小料理屋談義がどのよう
なものだったのか、概略は次の通りです。

敦賀本部長
「今、世界の化石燃料は地球にどのくらい残っているか、知っとるか?
 このまま行くと石油は41年でなくなる。
 ウランの埋蔵量は85年やけど、この新技術(高速増殖炉)を使えば、数千年
 分のエネルギーを確保できるんや。
 さらに温暖化の原因となるCO2をほとんど出さないで、環境保護にも抜群の
 効果がある。」

島耕作
「石油に頼っている現状だと石油原産国が中東やロシアに集中しているので
 出しおしみや価格吊り上げなどがあった場合には紛争の元になりますよね
 ところが、ウランは石炭は世界中に広く分布しているので、新たな紛争を
 生まないという利点もありますよ」

女将
「ホントですね- じゃ 世界中が高速増殖炉っていうの? それにしたら
 いいんじゃない?」
 
敦賀本部長
「もちろん日本だけじゃなく、フランス、インド、ロシアは、すでに運転して
 いるし、中国も実験炉を建設中や。
 近い将来、高速増殖炉を世界中が使うことになるのは間違いない。なぜなら
 21世紀半ばには世界の人口は90億人に達する。その後、石油はこの世から
 なくなってしまう。はっきりゆうて原発反対なんて言ってる場合じゃ
 ないんや。そのことをもっと日本人は知らなあかんと思うけどな・・・・」

と、こんな具合です。その前の部分では、同じく敦賀本部長なる人物が、

「(もんじゅは)他の原発に比べると建設費も安く、コストパフォーマンスは
 は格段にいいですよ。」
 
とも述べています。


これに対して、「ストップ・ザ・もんじゅ」のレポート「高速増殖炉からの撤退」
ですが、その巻頭にある、大島茂士朗さんのコメントに、基本的な反論が凝縮され
ていますので、その部分を引用します。

「 日本の原子力政策は、推進派の学者、官僚、独立行政法人(旧特殊法人)、
 電力会社、メーカーなどの「原子力村」で決められてきました。原子力
 委員会が主導するにせよ、資源エネルギー庁が主導するにせよ、いずれに
 しても議会とは無関係に、推進サイドで固めた委員会や審議会の中で政策
 が事実上決定される仕組みです。推進当事者がことを決めるのですから、
 撤退や中止などの政策変更はまず起こりえません。
  「もんじゅ」を手がける日本原子力研究開発機構(以下、原子力機構)
 は、「高速増殖炉開発は世界中で進められている」と事ある毎に主張して
 きました。最近ではフランス、ロシア、中国、インドを「開発先進国」と
 持ち上げ紹介しています。しかし「概説」の項(※)で説明するように、
 高速増殖炉のパイオニアであるアメリカはもとより、イギリス、ドイツで
 も高速増殖炉開発からすでに撤退してしまっています。さらに現在のフラ
 ンスの炉は増殖炉ではなく、しかも2008年で撤退することが決まっていま
 す。ロシアの炉も増殖炉ではありません。インドの高速増殖炉は、今年
 (2006年)3月の『米印原子力協力協定合意』で軍事用であることが明ら
 かになりました。今年、ブッシュ政権が提唱した「もんじゅ」を用いた日
 米間の共同研究なる話も、アメリカの思惑は「核拡散に結びつきにくい核
 廃棄物の消滅・焼却処理研究」であって、軍事用高速増殖炉の開発は言う
 に及ばず、日本が進めているエネルギー開発を目的とした高速増殖炉の開
 発とも全く次元が異なります。”孤立する者藁をもつかむ”ということな
 のか、原子力機構は少しでも自分たちに有利と判断したニュースを都合良
 く加工して、時には事実をねじ曲げ宣伝しているに過ぎません。」

  (※:概説の項とは、「高速増殖炉からの撤退」の第一章のこと)

ここに述べられているように、高速増殖炉によって商業的にエネルギーを供給
することは、技術的に全くメドが立っておらず、度重なるトラブルと、予算の
増大に耐えかねて、他の高速増殖炉開発「先進国」も、軒並み撤退の方向です。

漫画の中の敦賀本部長は、「世界中」といいながら、高速増殖炉の開発に、
世界に先駆けて取り組み、すでに撤退したアメリカの名前を挙げていません。
これはちょっとずるいですね。

そもそも、小料理屋でのエネルギー談義では、化石燃料が将来枯渇する危険性
が強調される一方で、高速増殖炉には、極めて楽観的な期待が述べられていま
すが、事情をよく知らない人が、「高速増殖炉が実現したら、石油が枯渇して
も何とかなる。」と感じるとしたら、極めて重大な誤解です。

基本的なことですが、原子力は総発電電力の1/3を占めており、将来的にも30-
40%程度を原子力発電でまかなう、というのが国の計画ですが、すべての一次
エネルギーに占める割合では、原子力は11.3%(2006年度エネルギー白書)に
過ぎませんし、国の将来計画も、おおよそ同程度と考えられます。
出力調整の難しさなどから考えても、原子力エネルギーで、社会のすべてのエ
ネルギーをまかなうことは、不可能であり、化石燃料の枯渇の問題に対して、
原子力は、抜本的な対策にはなり得ません。
(5/31追記:もちろん、それ以前に、放射性廃棄物の処理、事故の危険性、
核拡散などの重大な問題がいくつもあります。)

さて、島耕作の漫画に、なぜ、もんじゅの話が出てきたのか、真意はわかりま
せんが、どうしても気になることがあります。

現実の高速増殖炉開発については、文科省、経産省、電事連、日本電機工業会、
日本原子力研究開発機構による、「5者協議会」なるものが設置されています。
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/18/12/06122818/005.htm

論議の結論は、公開されていますが、論議の詳細は非公開です。

2006年12月の「5者協議会」では、高速増殖炉の「基本設計開始までの研究開発
体制に係る方針」なるものが、この「5者協議会」で「決定」され、国の原子力
委員会で「承認」されています。

http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/18/12/06122818.htm

このなかで、「これまでの護送船団方式を脱却し、明確な責任体制のもとで、
効率的に高速増殖炉開発を実施できるよう、中核メーカー1社に責任と権限及び
エンジニアリング機能を集中する」ということになっています。

原子力開発については、「自主・民主・公開」という大原則があるのですが、
まさに、議論の詳細を非公開にしたまま、官庁と業界が二人三脚で開発を推進
することになっています。
官製談合以上の、公然の癒着ではないでしょうか。
(これまでの体制を「護送船団方式」と自認しているところも強烈です)

島耕作の初芝電産は、この「中核メーカー1社」への参入を目論んでいるのでは
ないか・・・・というのは、菅波の考えすぎでしょうか。

武器商人とまでは言いませんが、技術的にも社会的にも重大な問題をはらんでい
る高速増殖炉ビジネスに、島耕作が手を染めるとしたら・・・。

まぁ、そんなえげつないことはしないと思いますが、ただ、今回の小料理屋談義
は、かなり確信犯的に思えましたので、これも一つの機会と言うことで、現実の
高速増殖炉開発の閉鎖性を取り上げてみたものです。
(この点も、先の大島さんのコメントに書いてある通りです。本当にうまく
まとめてあると思います。)

コメント

FBRの中止はないのは、推進派が集まっているから?

 大島茂士朗は、日本で増殖炉の『撤退や中止などの政策変更はまず起こりえ』ないと仰いますが、理由が原発の『推進当事者がことを決める』から中止は無い、とされています。

 しかし、国家プロジェクトに関わらず、推進当事者が中止・断念したプロジェクトも沢山あります。

 一方、かつて反原発を掲げた村山内閣(社民党)も、当選後は原発推進に鞍替えした事例もあります。

 これらを考えると、原発の推進派が決める事だから、『FBRが中止されることはあり得ない』と言う理屈は、おかしいのでは?

中国のFBRは?

 中国の、増殖炉・核燃サイクルの開発についても、反論をお願いします。

鉄槌ですね!

力強いコメントありがとうございました。鉄槌という言葉に勇気づけられました。それくらいの気合いで頑張りたいと思います。

面白かった

菅波さま
面白く読ませていただきました。
分かりやすく整理されてますね。
こういう反論を、バンバンやって下さい。
事実をねじ曲げ、都合の悪いことは伏せ、都合のいいことは誇大宣伝に使う、これは護送船団の常套手段です。
鉄槌を下すため、頑張りましょう。

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