子どもの「年20ミリシーベルト」基準に対する日弁連会長声明 

みなさま

文部科学省が、福島県の学校等の校舎・校庭等の利用判断における
暫定的な目安を「年20ミリシーベルト」とした件について、日本弁護士
連合会の宇都宮健児会長の声明が4月22日付で出されています。

以下、高木基金理事の中下裕子弁護士からのメール情報を転載します。

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「福島県内の学校等の校舎・校庭等の利用判断における暫定的考え方について」
に関する会長声明

4月19日、政府は「福島県内の学校等の校舎・校庭等の利用判断における
暫定的考え方について」を発表し、これを踏まえて、文部科学省は、福島県
教育委員会等に同名の通知を発出した。これによると「児童生徒等が学校等
に通える地域においては、非常事態収束後の参考レベルの1~20mSv/年
を学校等の校舎・校庭等の利用判断における暫定的な目安とする」とされており、
従前の一般公衆の被ばく基準量(年間1mSv)を最大20倍まで許容するという
ものとなっている。その根拠について、文部科学省は「安全と学業継続という
社会的便益の両立を考えて判断した」と説明している。

しかしながら、この考え方には以下に述べるような問題点がある。

第1に、低線量被ばくであっても将来病気を発症する可能性があることから、
放射線被ばくはできるだけ避けるべきであることは当然のことである。とりわけ、
政府が根拠とする国際放射線防護委員会(ICRP)のPublication109(緊急時
被ばくの状況における公衆の防護のための助言)は成人から子どもまでを含んだ
被ばく線量を前提としているが、多くの研究者により成人よりも子どもの方が
放射線の影響を受けやすいとの報告がなされていることや放射線の長期的
(確率的)影響をより大きく受けるのが子どもであることにかんがみると、子どもが
被ばくすることはできる限り避けるべきである。

第2に、文部科学省は、電離放射線障害防止規則3条1項1号において、「外部
放射線による実効線量と空気中の放射性物質による実効線量との合計が3月間
につき1.3 ミリシーベルトを超えるおそれのある区域」を管理区域とし、同条3項で
必要のある者以外の者の管理区域への立ち入りを禁じている。3月あたり1.3mSv
は1年当たり5.2mSv であり、今回の基準は、これをはるかに超える被ばくを許容
することを意味する。しかも、同規則が前提にしているのは事業において放射線を
利用する場合であって、ある程度の被ばく管理が可能な場面を想定しているところ、
現在のような災害時においては天候条件等によって予期しない被ばくの可能性が
あることを十分に考慮しなければならない。

第3に、そもそも、従前の基準(公衆については年間1mSv)は、様々な社会的・
経済的要因を勘案して、まさに「安全」と「社会的便益の両立を考えて判断」されて
いたものである。他の場所で教育を受けることが可能であるのに「汚染された学校
で教育を受ける便益」と被ばくの危険を衡量することは適切ではない。この基準が、
事故時にあたって、このように緩められることは、基準の策定の趣旨に照らして
国民の安全を軽視するものであると言わざるを得ない。

第4に、この基準によれば、学校の校庭で体育など屋外活動をしたり、砂場で
遊んだりすることも禁止されたり大きく制限されたりすることになる。しかしながら、
そのような制限を受ける学校における教育は、そもそも、子どもたちの教育環境
として適切なものといえるか根本的な疑問がある。

以上にかんがみ、当連合会は、文部科学省に対し、以下の対策を求める。

1 かかる通知を速やかに撤回し、福島県内の教育現場において速やかに
  複数の専門的機関による適切なモニタリング及び速やかな結果の開示を行うこと。

2 子どもについてはより低い基準値を定め、基準値を超える放射線量が検知された
  学校について、汚染された土壌の除去、除染、客土などを早期に行うこと、あるいは
  速やかに基準値以下の地域の学校における教育を受けられるようにすること。

3 基準値を超える放射線量が検知された学校の子どもたちが他地域において
  教育を受けざるを得なくなった際には、可能な限り親やコミュニティと切り離され
  ないように配慮し、近隣の学校への受け入れ、スクールバス等による通学手段の
  確保、仮設校舎の建設などの対策を講じること。

4 やむを得ず親やコミュニティと離れて暮らさざるを得ない子どもについては、
  受け入れ場所の確保はもちろんのこと、被災によるショックと親元を離れて暮らす
  不安等を受けとめるだけの体制や人材の確保を行うこと。

5 他の地域で子どもたちがいわれなき差別を受けず、適切な教育を受けることが
  できる体制を整備すること。

2011年(平成23年)4月22日

日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児 

連名依頼:子どもの「年20ミリシーベルト」基準の撤回を求める 

みなさま

事務局の村上です。

文部科学省が、学校等の校舎・校庭等の利用判断にあたっての
放射線量の目安として、「年20ミリシーベルト」という基準を、
福島県教育委員会や関係機関に通知しました。

これは大人よりも高い子どもの感受性や内部被曝を考慮してお
らず、受け入れることのできない数値です。即刻撤回させる必要
があります。

さらに悲しいことは、この判断が、原子力安全委員会の5名の
委員の議事録もない非公式の合意によって出され、子どもの命
を守るべき文部科学省は独自の検証もなくただそれに追認した
だけという、あいまいで無責任なプロセスによって決められて
いるということです。

以下の緊急声明への賛同(団体・個人)をお願いします。
(第一締切は4月25日(月)23時)

*先日呼びかけ団体と文部科学省、原子力安全委員会との間で行われた会合。
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1012

-----(転送歓迎)
美浜の会、フクロウの会、グリーン・アクション、FoE Japan、グリーンピース
・ジャパン、原子力資料情報室の6団体は、下記のような緊急声明および
要請を政府に対して提出します。連名可能な団体・個人は、4月25日(月)23時
(一次締め切り)までに、下記のフォームよりご連絡ください。
https://spreadsheets.google.com/spreadsheet/viewform?formkey=dGFmYldDV3RzVXFiV2Z5NDhuQXp4OXc6MA

=======以下声明&要請文
呼びかけ団体:グリーン・アクション、グリーンピース・ジャパン、原子力資料
情報室、福島老朽原発を考える会、美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会、
国際環境NGO FoE Japan

【緊急声明と要請】
子どもに「年20ミリシーベルト」を強要する日本政府の非人道的な決定に抗議し、
撤回を要求する

4月19日、文部科学省は、学校等の校舎・校庭等の利用判断における放射線量の
目安として、年20ミリシーベルトという基準を、福島県教育委員会や関係機関に
通知した。この年20ミリシーベルトは、屋外で3.8マイクロシーベルト/時に相
当すると政府は示している。
3.8マイクロシーベルト/時は、労働基準法で18歳未満の作業を禁止している
「放射線管理区域」(0.6マイクロシーベルト/時以上)の約6倍に相当する線
量を子どもに強要する、きわめて非人道的な決定であり、私たちは強くこれに
抗議する。

年20ミリシーベルトは、原発労働者が白血病を発症し労働認定を受けている線量
に匹敵する。また、ドイツの原発労働者に適用される最大線量に相当する。
さらにこの基準は、大人よりはるかに高い子どもの感受性を考慮にいれておらず、
また、内部被曝を考慮していない。
現在、福島県によって県内の小・中学校等において実施された放射線モニタリン
グによれば、「放射線管理区域」(0.6マイクロシーベルト/時以上)に相当す
る学校が75%以上存在する。さらに「個別被ばく管理区域」(2.3マイクロシー
ベルト/時以上)に相当する学校が約20%も存在し、きわめて危険な状況にある。

今回、日本政府が示した数値は、この危険な状況を子どもに強要するとともに、
子どもの被曝量をおさえようという学校側の自主的な防護措置を妨げることにも
なる。
文科省は、20ミリシーベルトは、国際放射線防護委員会(ICRP)勧告Pub.109お
よびICRP3月21日付声明の「非常事態収束後」の基準、参考レベルの1-20ミリ
シーベルトに基づくとしているが、その上限を採用することとなる。
21日現在、日本政府からは、本基準の決定プロセスに関しては、何一つ具体的な
情報が開示されていない。また、子どもの感受性や内部被曝が考慮されなかった
理由も説明されていない。文科省、原子力安全委員会において、どのような協議
が行われたのかは不明であり、極めてあいまいな状況にある(注)。

私たちは、日本政府に対して、下記を要求する。
・子どもに対する「年20ミリシーベルト」という基準を撤回すること
・子どもに対する「20ミリシーベルト」という基準で安全とした専門家の氏名を
公表すること

(注)4月21日の政府交渉で、原子力安全委員会は正式な会議を開かずに、
子どもに年20ミリシーベルトを適用することを「差支えなし」としたことが
明らかになった。また、4月22日、5人の原子力安全委員の意見とりまとめについて
議事録は無かったと、福島瑞穂議員事務所に回答している。

(参考)
4月21日付ドイツシュピーゲル誌の20ミリシーベルト設定に関する記事(「文部
科学省、子どもたちに対してドイツの原発労働者と同様の被爆限度基準を設定」)
より、専門家のコメント
エドムント・レンクフェルダー(オットーハーグ放射線研究所)
「明らかにがん発症の確率が高まる。基準設定により政府は法的には責任を逃れ
るが、道徳的には全くそうではない。」

以上

高木仁三郎さんの本 

事務局の村上です。

高木仁三郎さんの本が、いまいくつかの出版社で増刷あるいは再刊に向けて
準備が進められています。

七つ森書館から4月20日に発売予定
『チェルノブイリ原発事故』
『食卓にあがった放射能』(旧講談社現代新書『食卓に上がった死の灰』)
『反原発、出前します』

○白水社にて新装版の発行準備中
『いま自然をどうみるか』

○講談社にて再刊準備中
『原子力神話からの解放』(旧光文社カッパブックス)

また、岩波新書の『原発事故はなぜくりかえすのか』『市民科学者として生きる』
『プルトニウムの恐怖』、岩波ジュニア新書『元素の小事典』も増刷中です。

高木仁三郎さんの著作一覧はこちらからご覧いただけます。
http://www.pen.co.jp/t-tyosakusy/tyosak1.html

いまから10年前、「高木仁三郎著作集」が刊行されたとき、作家で昨年亡くなられた
井上ひさしさんが、難しい原子力の世界を分かりやすく語った高木仁三郎さんの
コトバについて、次のような書評を寄せられています。

「高度な理論を平易に砕いてくれた高木さんの親切なコトバは、
いま、わたしの心の中でダイヤモンドのように硬くなり、そして希望の光を放っています」
http://www.pen.co.jp/syohyou/s-tyosaku/syohyou_t.html

10年たったいま、その光は、ますます輝きを増しているように思えてなりません。

放射能による汚染について学ぶ 

事務局の村上です。

高木基金にも、いっこうにとまらない放射能について、どのように対応すれば
よいのか、お問い合わせをいただくことがあります。

聞き慣れない言葉が多いですし、なかなか不安はぬぐえませんが、少しずつで
も学ぶことによって、日々の一つ一つの迷いに対して、納得のいく判断ができ
るようになればと思います。

以下、参考になりそうな映像や資料をいくつか掲載いたします。

<映 像>

■原子力資料情報室 「放射線と被曝について」

その1 その2 
(元放射線医学総合研究所主任研究官で、高木学校の崎山比早子さんが、Q&A形式で
 わかりやすく解説されています。)

■京都三条ラジオカフェ 「内部被曝について」

 http://www.ustream.tv/recorded/13471866
(琉球大学名誉教授の矢ヶ崎克馬さんによる解説です。矢ヶ崎さんによる紙面での資料は
 こちらからご覧いただけます)
 
■チェルノブイリ救援・中部 河田昌東さんの解説(4/3)

その1 その2
(土壌汚染、海洋汚染、放射能対策から原子炉の状態まで幅広く解説されています。
 河田さんは遺伝子組み換えナタネの問題で高木基金の助成も受けておられる方です)

 <レポート>

■ドイツ放射線防護協会 「日本における放射線リスク最小化のための提言」

 http://icbuw-hiroshima.org/wp-content/uploads/2011/04/322838a309529f3382702b3a6c5441a32.pdf
(食べ物や飲み物の摂取について、年齢別に考察・算出されています)

■スウェーデン国立スペース物理研究所(IRF)の山内正敏さんによる
 「放射能漏れに対する個人対策」

 http://www.irf.se/~yamau/jpn/1103-radiation.html
(「緊急行動指針」として、脱出基準や屋内待避基準などが分かりやすく書かれています)

■京都大学原子炉実験所などによる飯舘村周辺での放射線サーベイの報告書(暫定)

 http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/seminar/No110/iitatereport11-4-4.pdf
(放射能が必ずしも同心円状に広がるものではないということがよく分かります)

以上です。

「福島原発震災」をどう見るか(柏崎刈羽・科学者の会) 

「柏崎刈羽原発の閉鎖を訴える科学者・技術者の会(柏崎刈羽・科学者の会)」から、
「福島原発震災」をどう見るか---私たちの見解(その2)が発表されました。

 → http://kk-heisa.com/data/2011-04-07_kkkenai2.pdf

すでにブログでお伝えしていますが、3月23日の「見解」も発表されていますので、
合わせてご覧ください。

 → http://kk-heisa.com/data/2011-03-23_kkkenkai.pdf

チェルノブイリと福島の違い 

事務局の村上です。

高木基金理事の細川弘明さんが3月28日の「FM797京都三条ラジオカフェ」で
チェルノブイリと福島原発の違いについてお話をされたことをご紹介します。

「チェルノブイリと違うことは間違いないが、違うというのは必ずしもましだという
意味ではなく、チェルノブイリよりも条件が違うがゆえに悪くなる面がある」という
視点でのお話です。

こちらからお聞きいただけます)

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●放射能の出方について

・チェルノブイリは最初に大きな爆発があり、大量の放射能が出て、空高く
 上がり、遠くまで飛んだ。広く薄く被曝した(これはこれで問題)。
・福島原発は大爆発ではなかったが、近くに死の灰が落ちている。周辺地域
 の放射能汚染でいうと、すでに測定されている土や空間の放射線量からして
 も、福島の方が悪くなる可能性がある。
・チェルノブイリ事故のピークは2週間くらいだったが、福島の場合はこれから
 数ヶ月続くことを覚悟しなければならない状況。「だらだらほそぼそ」でも、
 蓄積していく。
・チェルノブイリよりも条件が違うがゆえに悪くなる可能性もあるということを
 考えておく必要がある。

●現在の状況

・現在は、幸い海に向かう風が多いが、北西、南西方向に「舌」を出すような
 形で高濃度の汚染地帯ができている。
・発生から二週間がたち、報道の扱いが少なくなっているが、現場の状況は
 全く改善されていない。数日前にこれまで高くなかった原発西側の地域で
 急に放射能の数値が高くなり、その後、低くなることがあった。まとまった
 放射能雲による影響だろう。
・一喜一憂しても仕方がないが、こういう深刻な状況がしばらく続く可能性。

●放出されている放射性物質

・福島第1の3号炉ではプルトニウム燃料を使用。チェルノブイリでも炉心
 崩壊によって最終的に出たが、福島は大破壊に至らなくてもプルトニウム
 が出る恐れ。
・MOX燃料に関する国際研究で、プルトニウム燃料の危険度は、条件に
 よって違うが、事故の場合の汚染は最大で2倍くらいの評価をしないと
 いけないという結論を出している。
・プルサーマルが開始されたばかりだったので、入っているプルトニウムの
 量が少ない(炉心の3分の1まで入れる計画だが、恐らく10%未満)ため、
 この研究結果ほど悪くはならないだろう。
・一方で、セシウムが出ている。数字は公表されていないがストロンチウム
 も出ているだろう。
・チェルノブイリの健康被害(長期間たってから癌や白血病)はセシウムが
 原因だったケースが多い。7~8割がセシウムという研究もある。
・半減期の短いヨウ素ばかりが発表されている。しばらく置いておけば飲ん
 でも心配ないと思うかもしれないが、セシウムが入っていれば、よくない。
・こうした半減期の長い放射性核種に注意が必要。こういう数字を公開し、
 対策を練ることが大事。
・全体としての汚染がどういう濃度でどの地域に進行しているかということ
 を確認する必要がある(が、なかなか発表されない)

●震災も同時に起きている

・福島では地震の震災とともに原発事故が発生している。こうした事態の難しさ
 が、避難している人のケアや事故に対する人員投入など、様々なところで
 ネックになっているだろう。
・電力会社の現地採用の職員や嘱託の人がたくさんいるが、自分の地域が
 津波でやられていたり、家族が行方不明でありながら、原発対応に当たって
 いるという話も聞く。同時に起きるということはチェルノブイリではなかったこと。

●放射線の影響

・基本的には集団被曝量(どれくらいの人数が、どれくらいの放射線を合計で
 浴びたか)で、その後の長期的な健康被害の量は違ってくる。同じ汚染状況
 であっても、人口が多ければそれだけそれに比例して健康被害が出る恐れが
 高くなる。
・TVなどで「~の線量をあびたら~くらいの被害」という説明を聞くが、基本的に
 大人の数字を言っている。同じ量の放射線を浴びたとき、10歳は20歳より2倍
 くらい発がんの可能性が高まる。0歳児では3倍かそれ以上。年齢を考慮した
 厳しい評価をする必要がある。
・学説の違いや議論もあるが、この間の議論を聞いていて思うのは、理論的な
 ペーパー上の議論でなく、実際にチェルノブイリで何が起きて、当事者が
 どういう経験をしているのかを見て考えなければならない。
・「甲状腺癌は比較的早期発見しやすく、手術や薬剤による治療が進んでいる
 癌なので治る。大騒ぎする必要ない」などと言うのは、チェルノブイリを
 見ていない人のセリフ。
・チェルノブイリでは、実際に早期発見され、治療できた子どももいるが、その子
 たちが皆無事に過ごしているかというとそうではない。手術した場合は一生
 ホルモン剤を飲まなければならない(成長ホルモンの出る臓器をとるため)。
 毎日薬を飲むことによるストレス、体調の乱れ、経済的負担などがある。
・放射能汚染によって人間や社会に何が起こるか、現実としてあるものをトータル
 で見れば、治るとかそれほど増えないなどと言えない。

●チェルノブイリの教訓

・距離と方角だけでは放射能汚染の実態を押さえきれない。雨や雪によって、
 ホットスポット(距離が離れているのに汚染が高い場所)ができる。測定し、
 それを早く把握することが重要。
・早急に汚染分布図などをつくって対応することが重要。

(文責:村上)