10/16 カネミ油症東京大集会に参加して 


事務局の菅波です。

先週の土曜日に、都内で開催された「カネミ油症東京大集会」に参加してきました。
集会には、長崎県の五島などから、被害者の方10名が参加し、今も(そしてこれからも)
つづく油症被害の苦しみを切実に語り、国に対して、早期の救済対策実施を求めました。

ダイオキシン類を直接食事から摂取し、それによって、次世代にまで深刻な被害を及ぼ
したカネミ油症問題の重さを再認識しました。会場には140人もの参加者が詰めかけ、
被害者のみなさんの訴えに耳を傾けました。

菅波は、高木基金として、カネミ油症被害者支援センター(YSC)のみなさんの被害
者への聞き取り調査を助成したことを紹介し、この取り組みが、市民科学のモデルであ
り、他の多くの問題に取り組む人たちにも、貴重な教訓をもたらしたものだと言うこと
を述べました。

そこまでは良いのですが・・・今回の集会に参加して、大変驚き、憤りを覚えたことが
あります。それは、2007年に与党(当時の自民・公明)の救済勧告を受けて、厚生労働
省が実施した「油症患者に係る健康実態調査」についてです。今回の集会で、YSCの
みなさんが、これに関する「検証報告書」<中間報告版>を配布しました。その前書き
から、なぜこの「検証報告書」を出さなければならなかったか、を紹介します。

「(前略)2010年3月31日に発表された・・・「油症患者に係る健康実態調査結果の報告」
 の内容は、「解析」に値しない単なる「集計」にとどまり極めて不十分なものであっ
 た。第三章で詳しく述べるが、「家族の死因など」「出産異常など」「こどもや孫に
 ついて」などの集計すらされていない。これらは油症の実態を把握するためには欠か
 せない項目の筈である。そしてなによりも欠けているのは設問の随所にある「記載欄」
 (これまでにかかったことのある病気、妊娠・出産に関する異常、お子さんやお孫さ
 んに関する設問等)や巻末の「自由記載欄」の分析である。・・・プライバシーへの配
 慮や公表にあたっての認識の差異がなどを理由に主な内容の記載だけにとどめたとあ
 るが、内容を変えずに個人が特定されないようにする方法はあり、また、油症被害者
 の40余年にわたる、思い出したくもない苦痛に満ちた体験の中から絞り出された生の
 声であるから、たとえ一例だけであったとしても、それは貴重な情報ととらえるべき
 であり、「その他」の中に埋もれさせてはならない。」

今回の健康実態調査には、調査対象1,420人のうち、1,131人が回答したにもかかわらず、
厚生労働省は、このせっかくの回答を、きわめて曖昧な「集計」にとどめ、油症被害の
実態から目を背けようとしているのではないかとの思いから、YSCのみなさんは、
「被害者自身の判断で」YSCに提出された調査と同様の内容のデータを約200名から
受け取り、切実な被害の実像を浮き彫りにした「検証報告書<中間報告版>」を作成
したのです。

厚労省側の姿勢は、極めて不誠実なものだと思います。また、YSCのみなさんがまと
めた「検証報告書」は、国側の怠慢を厳しく糺すもので、YSCのみなさんの熱意と、
被害者のみなさんとの信頼関係があったからこそできた、大変貴重なものだと思いまし
た。

この「検証報告書」は、まだ中間報告とのことで、YSCのみなさんは引き続き分析を
すすめ、国側に対して、健康実態調査報告の問題性を訴えていくとともに、被害者救済
を求めていくとのことです。

YSCのみなさんの取り組みに、あらためて敬意を表したいと思います。そして、この
問題の今後の経過を含め、「市民科学」のあり方を考える上での重要な実践であり、教
訓として、自分自身、学んでいきたいと思っています。

台湾の第四原発に思うこと 

事務局の村上です。

9月19日に台湾からノ―ニュークス・アジアフォーラム(NNAF)の様子
をお知らせして以来、すっかりご無沙汰いたしました。帰国以来、
冊子「10年の歩み」や高木基金の新しいパンフレットの作成、そして
「10年のつどい」の準備と追われていました。

ようやくひと息…というところですが、これからはアジアの助成選考の
準備に入ります。今年は21件の応募が寄せられました。結果は年末
までに発表する予定です。今年もあっという間に終わってしまいそう
な予感です。

今日は、台湾でのNNAFの続きを少し書きます。

              ◇◇◇

台風の勢いが弱まり始めた2日目午後、台湾環境保護連盟などの案内で、
島の北部にまもなく「完成」するといわれている第四原発を訪れました。

台湾で「核四」とよばれる第四原発は、80年代に建設が計画されて以来、
現地の住民を中心に反対運動が高まり、2000年には脱原発を掲げる
民進党が政権に就き、建設中止が発表されたこともありましたが、
翌年には再開され、現在に至っています。

原子炉は東芝と日立製作所、タービンは三菱重工業が受注し、
日本から輸出されています。日本でも長年、台湾の団体などとの連携の
もとに、建設および原発輸出の中止を求める活動が行われてきました。

今回の訪問後、地元の住民団体の呉文通さんを迎えて夕食会が
開かれましたが、呉さんからは「多くの仲間が(間もなく稼働するという)
現実に直面することをためらっており、出てこられなかった」という
話がありました。建設計画から30年目のその言葉の意味の重さを
考えなければならないと思いました。

第四原発では、建設期間中の設計変更などにより、安全性が疑問視
されており、呉さんからはある技術者から「運転が開始される15日前には
逃げるように」と言われているという話もありました。地元の人々の
不安や脅威はこれから先も原発が止まらない限り、何十年も続きます。

日本は国と産業界が一体となって、アジアの国などに原発輸出を推し
進めようと躍起になっています。その目的は何なのか。誰のためになるのか。
それによってどのような未来が待ち受けているのか。長い時間のスパンで、
納税者でもある私たちは深く考えなければならないと思いました。

日本でもいま、山口県で28年前に計画された上関(かみのせき)原発建設
のために、うつくしい海が埋め立てられようとしています。ここでも、
地元の人々はずっと闘い続けています。

10年の「つどい」から、今後に向けて 


事務局の菅波です。

一昨日の「高木仁三郎没後10年のつどい」には、200名もの方が参加して下さいました。

ただ昔を振り返り、懐かしむだけの集まりではなく、いまでもそれぞれの持ち場、現場で
仁三郎さんから学んだことを、それぞれ実践しようとしている人たちの集まりだったと
思います。そういう意味で非常に前向きで、活気のある「づどい」でした。

後半のパーティで、ある方が、「この会に参加して、高木仁三郎はまだ生きていることを
実感しました。」と発言されました。これは非常に意味のあることだと思いました。

高木仁三郎二世というような人は容易に生まれていないし、そのようなことを安易
に期待していてはダメだと、菅波自身は思っています。
多くの人が、仁三郎さんから受け継いだものを実践し、それをまた次の人に引き
継いで行くしか方法はないのだと思います。



「つどい」は、一部が講演、二部がパーティというかたちでしたが、高木基金では、
二部の後に、役員、助成先、支援者や協力者の方に集まっていただき、これからの
活動のあり方を考えいるブレーンストーミングの場を設けました。

どれくらいの方が集まって下さるのか、話がキチンとできるのか、実は非常に不安
でしたが、30名弱の方が集まり、2時間近く、ざっくばらんに、かつ積極的な意見
交換をすることができました。

理事会や選考委員会で、今までの選考の際に話し合ってきたことを、助成先や、
この場で始めて顔を合わせた方を交えて、率直に話し合いましたが、考えてみる
と、助成をする団体で、選考に関わることをこれほどオープンに議論する団体は、
あまりないのではないかと思います。

高木さんが目指した「市民科学」の考え方や、その基本になる市民社会のあり方に
ついてのスタンスが明快であるからこそ、このような議論が成立するのだろうと
思います。

それにしても、このような(ある意味で事務局の思いつきの)場に、参加して、
意見を述べて下さる人が、少なからずいると言うことが、本当にありがたいと思い
ます。このような人のつながりを、すこしずつ広げていくことが、今後の活動の
基盤になっていくのだと思います。

10年の節目に、これからの高木基金のあり方を考え、具体的に実行していくため
の足場ができました。これを大切に、発展させていきたいと思っています。


姫野雅義さんのことば 

徳島県の吉野川の保全活動で活躍しておられた姫野雅義さんが亡くなられました。

10月3日に、徳島県の海部川に鮎釣り出かけ、その後の行方がわからなくなっていま
したが、本日午前、遺体で発見されたとのことです。本当に残念です。

高木基金としては、第一回の助成で、姫野さんらによる調査研究に100万円の助成を
しました。調査研究のテーマは、

 『 森林の治水機能の向上による「緑のダム」効果
   ―吉野川流域における治水ダム(可動堰)への代替案としての森林整備― 』

でした。この研究のレポートは、以下のアドレスからご覧になれます。

http://www.takagifund.org/grantee/report/rep2004/01-050.pdf

姫野さんらによる「緑のダム」研究は、高木基金が助成したと言うより、市民科学の
優れたモデルとして、高木基金の理事会や事務局としても学ぶべきところが大いにあり
ました。

2003年には、高木基金として「京都公開講座」を開催し、姫野さんにおいでいただいて、
調査研究の成果などを報告していただきました。

そのときの資料は、こちらにアップしました。
http://www.takagifund.org/grantee/2003-11-09_tf-kyoto.pdf
この資料の方が、調査研究の概要がわかりやすいかと思います。

この公開講座の資料の中にも含まれているのですが、高木基金の助成が決まったとき
の印象などを、姫野さんがご自身の「第十堰日誌」に書いて下さっていますので、
下記に紹介させていただきます。

菅波自身は、高木基金の事務局を引き受ける前から、吉野川の問題などで姫野さんと
おつきあいをさせていただき、たくさんのことを教えていただきました。

本当に残念で仕方がありませんが、心からご冥福をお祈りいたします。

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 第十堰日誌 「高木基金と徳島市補助金」       2002.3.22 姫野 政義

 3月22日夕方、本業の司法書士事務所の仕事をしていたら、東京の「高木仁三郎市民
科学基金」から「吉野川の緑のダムの研究を助成します」というメールが入ってきた。

 うれしかった。うれしかったが思わず背筋が伸びた。そんなうれしさだった。
 それは、この基金が実は多くの市民たちが高い志のもとにお金を出し合って作った
特別の基金なのだ、ということをつい一ヶ月前に知ったからだった。

 この基金の選考方法は少し変わっていて、一般市民も交えた公開プレゼンテーション
が三次選考となる。2月、そのプレゼンで発表するため勇んで上京したぼくは、審査員
の方から高木仁三郎さんの遺言で作られたこの基金の現状を聞いて驚いた。

 「未来への希望と高い倫理性をもって行動する市民科学者を育てたい。」と高木さん
が遺産3,000万円を提供し、これに共感した多くの市民が寄付をだしあって出来た基金
の総額は現在7,000万円だという。
 「わずか7,000万円程度では数年でなくなってしまいそうですが、この基金が生かされ
さえすれば、きっとまたお金は集まるでしょう」と審査員の方はさりげなく言っていた。
 二次選考通過者のプレゼンに対しては、審査員の質問だけでなく研究へのアドバイス
などが会場から活発におこなわれた。

 そうか。これは運動なのだ。ぼくたちが第十堰基金を作り、住民が自らお金を出して、
川の将来像を自分たちで決めようと動き始めたように、原子力に一科学者としての生涯
をかけることによって、人間と遊離した現代科学や巨大技術の根本的な変革を迫った
高木仁三郎さんの熱い遺志に共鳴した市民たちの気持ちが集まりかたちになっていく運動。

 その人たちの純粋な志ともどかしい思いが切ないほどに感じられ、ぼくは助成金をもら
いたい一心でやって来たことが少し恥ずかしくなった。つい「もっと必要とするところが
あれば、減らされてもかまいませんから」などとプレゼンでええかっこしてしまいそうに
なってあせった。

 高木基金の通知のあった3月22日、画期的な出来事が続いた。
 この日徳島市議会は、市民による「緑のダム」研究に、徳島市が半額を限度とする補助
金支出をすることを決議したのである。

 ジャーナリスト平野真佐志氏は次のように述べている。

「森林の保水力がどれだけあるか、コンクリートのダムにどれだけ代替できるか、は日本
政府が本来、率先して研究すべき課題です。「緑のダム」つまり、森林保全、育成は、
無駄な公共事業を削減し、自然破壊を防ぎ、国土保全、雇用確保に役立つ先鋭的な、現在
の日本に最も必要な緊急的研究課題です。(中略)NGOによる(見事な)政策提言、
それへの行政の参画、というこれからの日本が求めるモデルが初めて、吉野川第十堰の
反対運動を通して徳島市民が実現しました。日本のNGOがここまで力を持ってきた、
という意味で記念碑的な出来事だと思います。こういう所から日本は変わっていくのです。」

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【お詫び】ウェブサイトの不具合について>復旧しました 

ただいま、高木基金のウェブサイト http://www.takagifund.org/ がサーバーの設定
トラブルでアクセスできない状況になっています。
現在、復旧に努めていますので、大変ご迷惑をおかけしますが、ご了承下さい。

→ 高木基金のウェブサイトは、本日午後4時頃までに復旧しました。
  ご迷惑をおかけいたしました。



カネミ油症被害者支援センターから>10/16東京大集会 


事務局の菅波です。

助成先のカネミ油症被害者支援センターから、10月16日に都内で開催される
「カネミ東京大集会」の案内が届きました。

高木基金は、カネミ油症被害者支援センターによる、被害者の聞き取り
調査などについて、2003年度、2004年度、2007年度の3回にわたって
助成をしていますが、専門家ではない、市民グループによる被害者への
聞き取りが、被害の実態を浮き彫りし、行政に対策を求める取り組み
のなかで、大きな役割を果たしました。その意味で、高木基金の助成に
よる、「市民科学」の取り組みの、一つのモデルと言えるものです。

今回の集会も、とても重要な取り組みだと思いますので、ぜひご参加くだ
さい。

・名 称 「カネミ油症救済法成立に向けて!東京大集会」
・日 時 2010年10月16日(土)午後1時半〜5時
・主 催 カネミ油症被害者支援センター・各地の被害者団体 
・会 場 社会文化会館 第一会議室
     (東京都千代田区永田町1-8-1 地下鉄永田町駅下車4分)


以下は、高木基金に届いた案内文からの転載です。

「 カネミ油症事件は、発生以来43年が経過しました。この間、2007年仮払
 金返還免除法案が成立し、一定の前進を勝ち取りました。
  しかし、治療費保障、生活保障、治療法の研究開発、未認定放置問題等
 は、積み残されたままです。2010年通常国会では、残念ながら救済法の上
 程・成立には至りませんでしたが、被害者の健康状態、高齢化、生活困難
 の状況を考えれば、できる限り早期に救済法を成立させる必要があります。
  そのためには、首都東京で大規模な集会を成功させ、「救済法成立に向
 け」た大きな世論を形成していくことが求められます。
  以上の次第で別紙の通り「カネミ東京大集会」を開催いたします。ぜひ
 ともご賛同いただき、ご参加いただきたくお願い申し上げます。」、

【参考1:カネミ油症被害者支援センターのブログに概要があります】
http://blogs.yahoo.co.jp/qzg07170/63485035.html

【参考2:特別講演をされる常石敬一さんのブログにチラシの画像があります。】
http://tsune-3.cocolog-nifty.com/non_title/2010/09/1016-5ebc.html